something

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岩田小龍

2024.2.2 Fri - 2024.3.2 Sat

このたびTEZUKAYAMA GALLERYではニューヨーク在住のペインター、岩田小龍の個展「something」を開催いたします。
 
1974年大阪府に生まれた岩田は、アメリカンポップアートに代表されるリキテンスタインやウォーホールに憧れ、2004年にニューヨークに移住しアーティストとしての活動を開始しました。
 
日常生活で目にする広告や雑誌、アニメのキャラクターなどをモチーフに選び、岩田独自の手法でポップながらも厚みのある色の重ね方により、深みのある作品を制作しています。
 
今回出展する作品は日本に一時帰国した際にもらったお土産の箱のデザインがとても興味深く、そこから着想を得て作品の制作を進めました。
支持体はキャンバスではなく紙を使用しており、この紙はニューヨークで岩田がお世話になった友人から譲り受けた思い入れの深いものだといいます。ニューヨークで生活をはじめて20年目の今年、日本のお土産のデザインに魅了されて描き始めたこのシリーズにニューヨークでの思い出を詰めて、作品と共に来日いたします。
 

ドローイングの痕跡を残し、丁寧に色彩を乗せ出来上がった岩田のペインティングは、どこか懐かしさを感じさせてくれるでしょう。

 
【アーティスト・ステートメント】

きっかけはお土産で貰った鳩サブレーでした。とはいえ心惹かれたのは中身のお菓子ではなく缶の入れ物です。それは薄い黄色地に黒、白、赤の3色で構成されたイラストとタイポグラフィが絶妙なバランスで配置され、見た目の美しさと中に入っている鳩サブレーの味や香り、食感まで伝わってくる完璧なデザインでした。これを手にした瞬間「この入れ物を描きたい」という衝動に駆られました。これは芸術家としての性です。

鳩サブレーの絵を描きながら考えていたことがいくつかあります。

最初にこの入れ物をデザインしたデザイナーのことです。個人で完結できる絵画と違いデザインは依頼者と消費者の間に立って進めていかなければなりません。完成した時の充足感を想像するとこの素晴らしいデザインを羨ましく思いました。

次に現在私がニューヨークにいることです。ひとりの日本人がニューヨークのスタジオで目の前にある鳩サブレーの入れ物をスケッチブックに素描する姿を俯瞰すると平和な感じがするのです。

日本とニューヨークの距離もまた関心があります。日本で販売された商品が人を介して遥々ニューヨークに渡り私の手元にあります。当たり前のように海外製品を手にすることができる今の世の中ですが、改めて鳩サブレーの入れ物を見ていると近いようで遠い日本の風景や過去の記憶が蘇ります。

この絵に現在の感情を込めてそれを再び日本に持って行こうと思いつきました。合わせて私の身の回りにある入れ物を絵にしました。これらは全てニューヨークで入手したものです。その絵には少しずつですがニューヨークの空気と現在の私の感情が込められています。約一年かけて入れ物の絵を描き続けてきました。その間私の感情も色々変化しています。それぞれの絵に込められた感情の違いが作品にも現れているので何かを感じ取っていただければ幸いです。