ネバーエンディング

ネバーエンディング

和田直祐

2025.11.15 Sat - 2025.12.13 Sat

このたびTEZUKAYAMA GALLERYでは、和田直祐による個展「ネバーエンディング」を開催いたします。

和田は1983年兵庫県生まれ。2013年に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)大学院芸術研究科を修了しました。京都を拠点に活動を続けたのち、現在は大阪を拠点に精力的な制作を展開しています。

和田の作品において特筆すべきは、薄く溶いた絵具を幾層にも重ねる古典的技法「グレージング」を参照しながら、光と空間を主題に独自の絵画表現を構築している点です。高透明のメディウムを用いて何層にも塗り重ねられた絵具の層は、繊細な色彩と奥行きを帯び、光そのものを内包したかのような独特の透明感を生み出しています。鑑賞者との距離や視点によって形や色が微妙に変化し、まるで漂流する氷河のような流動性を伴う視覚体験をもたらします。また、重なりゆく記憶や時間の構造を取り込みつつ、それらを絵画として昇華することで、「見る」という行為そのものの再考を促します。

2022年の初個展では、前述の絵画構造を踏襲しながらも、支持体の一部を欠損させたり、消失・収縮・湾曲といった物質的変化を前景化させた作品群を発表し、自身の絵画表現を新たな局面へと展開しました。翌2023年の鈴木淳夫とのデュオ展「切磋 ― 絵画の証 IV」では、企画および展示構成までを両者で監修し、それぞれの絵画観を展覧会という形式を通して顕在化させました。さらに、2024年から始動した東京・大阪・ソウル(韓国)の3ギャラリーによる共同企画「Intervals」にも参加しており、来年にはソウルでの新作発表を控えるなど、今後の活動にも注目が集まる作家です。

約3年ぶりの開催となる本展では、これまでの制作プロセスに交錯してきた「トリミング」という要素を、より意識的に捉えながら考察します。前回の個展では、絵画空間の境界に物理的な欠損や裂け目といった「消失/空白」を介在させることで、歪なコントラストを生み出し、鑑賞者の想像力に委ねることで、絵画空間の補完性を問う構成を展開しました。本展では、ある図像を参照しつつ、その一部を切り取ることで新たなイメージが無限に派生することに着目し、これまでに構築してきた自身の制作プロセスとも重ね合わせながら制作した新作群を発表します。

個展に向けて和田は「創作の過程の一端や、その最中に生まれる感覚的な事柄をテーマにしたい。制作において思索を重ねる事だけに重点を置くだけでなく、行為や作品が立ち上がるまでの過程を通して絵画と向き合いたくなった。」と語っています。

多くの画家たちがオリジナリティの探求を続ける一方で、絵画史からの影響を免れ得ないのも事実です。本展における和田の試みは、そうした歴史的文脈との関係を改めて測り直す行為として捉えることができるでしょう。同時に、それは自身の絵画観を再検証し、絵画という営みそのものに対する批評的視座を促すものとなっています。

この機会にぜひ、ご高覧下さいませ。