
Viewing Room
Intervals: Extraction
アン・サンフン/松本奈央子/和田直祐
2025.7.12 Sat - 2025.8.9 Sat
このたび、TEZUKAYAMA GALLERY VIEWING ROOMにて、アン・サンフン、松本奈央子、和田直祐による三人展「Intervals: Extraction」を開催いたします。本展は、KOKI ARTS(東京)、TEZUKAYAMA GALLERY(大阪)、Gallery Chosun(ソウル)の3つのギャラリーによる合同企画であり、各ギャラリーの拠点都市を巡回する展覧会シリーズです。
昨年末に東京のKOKI ARTSにて第一回目「Intervals: Distance」が開催され、本展はその第二回目として大阪のTEZUKAYAMA GALLERYに巡回いたします。
本シリーズでは、各ギャラリーが所属作家の中から「抽象絵画」を実践するアーティストを選出し、全3回にわたって紹介します。巡回展でありながら、各会場ではギャラリーディレクターがテーマ設定から展示構成に至るまでを手掛け、開催地ごとに異なる展示コンセプトと作品が展開される点に、本企画のユニークさがあります。
第二回目となる大阪展「Intervals: Extraction」では、目の前にある対象や内省的な感覚の中から本質を掬い上げようとする「抽出(extraction)」の思考プロセスに焦点を当てます。ここで言う「抽出」とは、単に対象から具象性(具体性?)を排した状態を意味するのではなく、視覚的・感覚的・思想的な要素を丁寧に濾過し、選び取り、再編集していく連続的な選択の営みを指します。
出展作家であるアン・サンフン、松本奈央子、和田直祐は、それぞれ異なる技法や関心を持ちながら、「抽出」というキーワードに各々の立場から応答し、絵画という表現形式の枠組みを再考します。三者の異なる絵画表現を横断しながら見ていくことで、選び取られた形や色、構造の背後に潜む、目には見えない思考や時間の層に触れることができるでしょう。
そして、そこに立ち現れるのは、単に削ぎ落とされた形や色といった視覚情報だけではなく、選び取られた痕跡としての集積—感覚、記憶、知覚、身体性、あるいは存在への問いそのものです。
また、本シリーズでは、抽象絵画を「静止した造形物」として捉えるのではなく、常に流動し、変容し続ける”認識”と”感受”の受皿として提示することを試みます。参加アーティストたちが、それぞれの視座から世界を捉え直し、抽出(あるいは削ぎ落とす)ことで、どのような沈黙や距離を作品の中に宿らせているのか。展覧会タイトルにある「Intervals=間(あわい)」は、物と物のあいだの空間を指すのではありません。制作行為とその背後にある思考、あるいは作品と鑑賞者のあいだに生まれる関係性や緊張感といった余白そのものを意味しています。
本展を通して、抽象絵画という実践がいかにして私たちと世界の関係を紡ぎ直し、刷新していくのか―その静かで深い問いかけに触れる場となることを期待しています。